真間釈迦仏供養逐状
執筆年:文永七
釈迦仏造立の御事。無始曠劫よりいまだ顕れましまさぬ己身の一念三千の仏、造り顕しましますか。はせまいりてをがみまいらせ候わばや。欲令衆生。開仏知見〔衆生をして仏知見を開かしめ〕 乃至 然我実成仏已来〔然るに<善男子>我実に成仏してより已来〕は是也。但し仏の御開眼の御事は、いそぎいそぎ伊よ房(伊与房)をもてはたしまいらせさせ給ひ候へ。法華経一部、御仏の御六根によみ入れまいらせて、生身の教主釈尊になしまいらせて、かへりて迎ひ入れまいらせさせ給へ。自身竝びに子にあらずばいかんがと存じ候。
御所領の堂の事等は、大身阿闍梨がききて候。かへすがへすをがみ結縁しまいらせ候べし。いつぞや大黒を供養して候ひし其の後より世間なげかずしておはするか。此の度は大海のしほの満つるがごとく、月の満ずるが如く、福きたり命ながく、後生は霊山とおぼしめせ。
九月二十六日 日 蓮 花押
進上 富木殿御返事