王日殿御返事

執筆年:弘安三年
真筆あり
 弁の房の便宜に三百文、今度二百文給了んぬ。  仏は真に尊くして物によらず。昔の徳勝童子は沙の餅を仏に供養し奉りて、阿育大王と生まれて、一閻浮提の主たりき。貧女の我がかしら(頭)おろし(剃)て油と成せしが、須弥山を吹きぬきし風も此の火をけさず。されば此の二三の鵞目は日本国を知る人の国を寄せ、七宝の塔を・利天にくみあげたらんにもすぐるべし。  法華経の一字は大地の如し、万物を出生す。一字は大海の如し、衆流を納む。一字は日月の如し、四天下をてらす。此の一字返じて月となる。月変じて仏となる。稲は変じて苗となる。苗は変じて草となる。草変じて米となる。米変じて人となる。人変じて仏となる。女人変じて妙の一字となる。妙の一字変じて臺上の釈迦仏となるべし。南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経。恐々謹言。 日 蓮 花押 王日殿