松野殿御返事

執筆年:建治三
松野殿御返事(松野第四書)      建治三年九月。五十六歳作。      外九ノ六。遺二三ノ四五。縮一六三六。類一〇二九。 鵞目一貫文、油一升、衣一、筆十管給候。今に始めぬ御志申尽がたく候へば、法華経、釈迦仏に任せ奉り候。先立より申候、但在家の御身は余念もなく、日夜朝夕南無妙法蓮華経と唱候て最後臨終の時を見させ給へ。妙覚の山に走り登り、四方を御覧ぜよ。法界は寂光土にして瑠璃を以て地とし、金の縄を以て八の道をさかひ、天より四種の花ふり虚空に音楽聞え、諸仏菩薩は皆常楽我浄の風にそよめき給へば、我等も必ず其数に列ならん。法華経はかゝるいみじき御経にてをはしまいらせ候。委細はいそぎ候間申さず候。恐恐謹言。 建治三年丁丑九月九日             日蓮花押 松野殿御返事 追申候、目連樹十両許給はり候べく候。 (考四ノ二。)