問註得意鈔

執筆年:文永六
真筆あり
 今日召し合わせ、御問注之由承り候。各々御所念の如くならば三千年に一度花さき菓なる優曇華に値へる之身か。西王母之薗の桃、九千年に三度之を得る東方朔が心か。一期の幸甚何事か之にしかん。御成敗の甲乙は且く之を置く。前き立てて欝念を開発せんか。  但し兼日御存知有りと雖も駿馬にも鞭うつ之理、之有り。今日御出仕、公庭に臨んで之後は、設ひ知音たりと雖も傍輩に向ひて雑言を止めらるべし。両方召し合わせ之時、御奉行人訴陳の状之を読むの尅〈きざみ〉、何事に付けても御奉行人、御尋ね無からん之外、一言を出だすべからざるか。設ひ敵人等悪口を吐くと雖も、各々当身之事一二度までは聞かざるが如くすべし。三度に及ぶ之時、顔貌を変ぜず、・言を出ださず、・語を以て申すべし。各々は一処の同輩也。私に於ては全く違恨無き之由、之を申さるべきか。  又御共雑人等に能々禁止を加へ喧嘩を出だすべからざるか。是の如き事、書札に尽くし難し。心を以て御斟酌有るべきか。此れ等の嬌言を出だす事、恐れを存すと雖も、仏経と行者と檀那と三事相応して一事を成ぜんが為に愚言を出だす処也。恐恐謹言 五月九日 日 蓮 花押 三人御中