乗明聖人御返事

執筆年:建治三年
真筆あり
 相州鎌倉より青鳧二結、甲州身延の嶺に送り遣はされ候ひ了んぬ。  昔、金珠女は金銭一文を木像の薄と為し、九十一劫、金色の身と為りき。其の夫の金師は今の迦葉、未来の光明如来是れ也。今乗明法師妙日竝びに妻女は銅銭二千枚を法華経に供養す。彼は仏也、此れは経也。経は師也、仏は弟子也。涅槃経に云く_諸仏所師所謂法也。乃至 是故諸仏恭敬供養〔諸仏の師とする所は所謂法なり。乃至 是の故に諸仏恭敬供養す〕と。法華経第七に云く_若復有人。以七宝満。三千大千世界。供養於仏。及大菩薩。辟支仏。阿羅漢。是人所得功徳。不如受持。此法華経。乃至一四句偈。其福最多〔若し復人あって、七宝を以て三千大千世界に満てて、仏及び大菩薩・辟支仏・阿羅漢に供養せん。是の人の所得の功徳も、此の法華経の乃至一四句偈を受持する、其の福の最も多きには如かじ〕。  夫れ劣れる仏を供養する尚お九十一劫に金色の身と為りぬ。勝れたる経を供養する施主、一生に仏位に入らざらんや。但、真言・禅宗・念仏者等の謗法の供養を除き去るべし。譬へば修羅を崇重しながら帝釈を帰敬するが如きのみ。恐々謹言。 卯月十二日 日 蓮 花押 乗明聖人 御返事