上野殿母尼御前御書
執筆年:文永七年
母尼ごぜんにはことに法華経の御信心のふかくましまし候なる事、悦び候と申させ給い候え。
止観第五之事。正月一日辰の時此れをよみはじめ候。明年は世間忽々なるべきよし皆人申すあいだ、一向後生のために十五日まで止観を談ぜんとし候が、文あまた候わず候。御計らい候べきか。白米一斗御志し申しつくしがたう候。鎌倉は世間かつ(渇)して候。僧はあまたおわします。過去の餓鬼道の苦をばつくのわせ候いぬるか。
法門の事。日本国に人ごとに信ぜさせんと候しが、願や成熟せんとし候らん、当時は蒙古の勘文によりて世間やわらぎて候なり。子細ありぬと見え候。本より信じたる人々はことに悦ぶげに候か。恐恐謹言。
十二月二十二日 日 蓮 花押