上野殿御返事
執筆年:建治三年
真筆あり
むぎひとひつ(一櫃)、かわのり五條、はじかみ 六十給了んぬ。
いつもの御事に候へばをどろかれず、めづらしからぬやうにうちをぼへて候は、ぼむぶの心なり。せけんそうそうなる上、をゝみや(大宮)のつくられさせ給へば、百姓と申し、我が内の者と申し、やまのなかのすまいさこそとをもひやらせ給ひて、とりのかいこ(雛)をやしなうがごとく、ともしびにあぶらをそうるがごとく、かれたるくさにあめのふるがごとくうへたる子にちをあたうるがごとく、法華経の御いのちをつがせ給ふ事、三世の諸仏を供養し給へるにてあるなり。十方の衆生の眼を開く功徳にて候べし。尊しとも申す計りなし。あなかしこ、あなかしこ。恐恐謹言。
七月十六日 日 蓮 花押
進上 上野殿 御返事