校正の方針

はじめに

日蓮聖人御遺文検索(以下、『日文検』という。)は、なお(@meganehead1)が制作・管理している日蓮教学支援サイトです。このサイトでは日蓮聖人の御遺文(御書)が収録され、検索ワードを入力 すると該当の御遺文がヒットし、執筆年代と真筆の有無がわかるようになっています。
テキストデータは日蓮宗現代宗教研究所(以下、『現宗研』という。)のウェブサイトから抽出されたものですが、現宗研収録のデータには他の御遺文の混在や文字化け、誤字脱字などが存在します。それらは日文検にも引き継がれているため、利用上の大きな障害となっています。すべての異常を修正し、正確な 表記に改めることで、もっとも信頼できるデータベースを目指していくことが当面の目標です。

修正の対象

1. 他の御遺文との混在

ある御遺文の末尾に、別の御遺文が挿入されています。二つ目の御遺文については、新たに項目を立て る必要があります。

道妙禅門御書(各別書)(原文漢文)
建治二年八月。五十五歳作。
外一三ノ一一。遺二二ノ四。縮一五一六。類一六九五。 御親父祈祷の事承はり候間、仏前に て祈念申すべく候。祈祷に於ては顕祈顕応、顕祈冥応、冥祈冥応、冥祈顕応の祈祷ありと雖も、只肝要は 此経の信心を致し給ひ候はゞ、現当の所願満足あるべく候。法華第三に云く「雖有魔及魔民皆護仏法」。第 七に云く「病即消滅不老不死金言不可疑之」。妙一尼御前当山参詣有り難く候。巻物一巻之を進らせ候披見 有るべく候。南無妙法蓮華経。
建治二年丙子八月十日 日蓮花押
道妙禅門
(考四ノ四九。)#0228-300 四条金吾殿御返事(有知弘正法事)建治二(1276.09・06) 四条金吾殿御返事(四条第十五書)(有知弘正法事)
建治二年九月。五十五歳作。
内一七ノ三〇。遺二二ノ五。縮一五一七。類八七五。 正法をひろむる事は必ず智人によるべ し。故に釈尊は一切経をとかせ給て小乗経をば阿難、大乗経をば文殊師利、法華経の肝要をば一切の声聞、 文殊等の一切の菩薩をきらひて上行菩薩をめして授させ給き。設ひ正法を持てる智者ありとも、檀那なく んば争か弘るべき。然ば釈迦仏の檀那は梵王、帝釈の二人なり。これは二人ながら天の檀那なり。仏は六 道の中には人天、人天の中には人に出させ給ふ。人には三千世界の中央五天竺、五天竺の中には摩竭提国 に出させ給て候しに、彼国の王を檀那とさだむべき処に彼国の阿闍世王は悪人なり。聖人は悪王に生れあ ふ事、第一の怨にて候しぞかし。

2. 文字化け

検索ヒット画面および本文に絵文字が表示される事象がみられます。また、難読漢字が「※」や「・」などに置き換 わっていることがあります。それらは検索にヒットしない原因となるので、どの漢字なのかを「字源 net」 等で特定して補完します。

四条金吾殿御返事(梵音声書) 文永九(1272)
たとへば百草を抹りて一丸乃至百丸となせり。一丸も百丸も共に病を治する事これをなじ。譬へば大海の 一�{いったい}も衆流を備へ、一海も万流の味をもてるが如し。 妙法蓮華経と申すは總名也。二十八品と申すは別名也。月支と申すは天竺の總名、別しては五天竺是れ 也。日本と申すは總名也。別しては六十六州これあり。如意宝珠と申すは釈迦仏の御舎利也。龍王これを 給ひて頂上に頂戴して、帝釈是れを持ちて宝をふらす。仏の身骨の如意宝珠となれるは、無量劫所持の大 戒、身に薫じて骨にそみ、一切衆生をたすくる珠となる也。たとへば犬の牙の虎の骨にとけ(渙)、魚の骨 の※うの気に消ゆるが如し。

3. 誤字脱字・誤植

1. 誤字

原本とは異なる語句が記載されています。

「災難対治鈔」正元二(1260.02) 真筆あり
暴雨悪風不依時節 常遭飢饉苗実不成 多有他方怨賊侵掠国内 人民受諸苦悩土地無有所楽之処〔《中略》 暴悪風時節に依らず、常に飢饉に遭って苗実成らず、多く他方の怨賊有って国内を侵掠し、人民諸の苦 悩を受け土地所楽之処有ること無けん〕

2. 脱字

原本にあるべき語句が抜けています。脱字は稀ですが、これまで修正済みの御遺文に存在しました。 ちなみに厳密には脱字ではありませんが、下記の御遺文では原本で抜けが見られます。《 》で表記され ている箇所がそうです。しかし【脱字】と表記しないと、誤植に見えかねません。別途対応を要します。

師子王御書 弘安元年(1278) 真筆あり
閻浮提中飢餓《 》示現閻浮提中《 》又云く_又示現閻浮提中《 》劫起等云云。
人王三十代《 》国の聖明王《 》国にわたす。王不用此〔此れを用ひず〕して三代仏罰にあたるべし。釈 迦仏を申し隠すとが《 》念仏者等善光寺の阿弥陀仏云云。上一人より下万民にいたるまで皆人《 》此れをあらわす。日蓮にあだをなす人は、惣じて日蓮を犯す。天は惣じて此の国を《 》

3. 誤植

本文には存在しない文が挿入されています。

法華題目抄 文永三(1266) 真筆あり
今の女人は偏に他経を行じて法華経を行ずる方をしらず。とくとく心をひるがえすべし。心をひるがえす べし。南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経。
日 蓮 花押
文永三年[丙寅]正月六日於清澄寺未時書畢〔清澄寺に於て未の時書き畢んぬ〕と唱えさせ給うべし。 《 》無量無数劫 聞是法亦難。第五
の五字
の五
眼ある人も人畜草木の色かたちをしらす。日月いて給てこそ始めてこれをはしることには候へ。爾前の諸 経は長夜のやみのことし。法華経の本迹二門は日月のことし。諸の菩薩の二目ある、二乗の眇目なる、凡 夫の盲目なる、闡提の第一の《 》御かたきなれ。と

兄弟鈔 文永十二(1275.04.16) 真筆あり
いたる→向いたる
四条金吾殿御返事(梵音声書) 文永九(1272)
然者〔然れば〕日蓮賎身なれども、教主釈尊の勅宣を頂戴して此の国に来れり。此れを一言もそしらん人々 は罪を無間に開き、一字一句も供養せん人は、無数の仏を供養するにもすぎたりと見えたり。 教主釈尊は一代の教主、一切衆生の導師也。八万法蔵は皆金言、十二部経は皆真実也[7→p0665]。無量 億劫より以来、持ち給ひし不妄語戒の所詮は、一切経是れ也。いづれも疑ふべきにあらず。

3. 誤字脱字・誤植

統一されたルールにおいて表記されていません。これらを統一すると、より整然とした印象を与えるこ とができます。表記の不統一は以下の 2 つです。

1. 「。」と「 」の混在

主に経文において「。」と「 」が混在しています。 これらは「。」に統一すべきです。「 」で統一すると文面がスカスカに見えて見栄えが悪いため。

立正安国論(広本) 建治・弘安の交(1275-78) 真筆あり 世尊 我等四王竝諸眷属及薬叉等見如斯事 捨其国土無擁護心。非但我等捨棄是王。必有無量守護国土諸 大善神皆悉捨離。既捨離已其国当有種種災禍喪失国位。一切人衆皆無善心 唯有繋縛殺害瞋諍 互相讒諂 抂及無辜。疫病流行 彗星数出 両日竝現 薄蝕無恒 黒白二虹表不祥相 星流地動 井内発声 暴雨悪 風不依時節 常遭飢饉苗実不成 多有他方怨賊侵掠国内 人民受諸苦悩土地無有所楽之処
ほかに、字下げも廃止すべきです。読みにくいだけで意味がないため。
四条金吾殿御返事 建治二(1276.06・27) 四条金吾殿御返事(四条第十三書)      建治二年六月。五十五歳作。 宝外八。遺二一ノ一五。縮一四四一。類七一一。 一切衆生南無妙法蓮華経と唱るより外の遊 楽なきなり。経に云「衆生所遊楽」云云。此文あに自受法楽にあらずや。衆生のうちに貴殿もれ給べきや。 所とは一閻浮提なり日本国は閻浮提の内なり。遊楽とは我等が色心、依正ともに一念三千自受用身の仏に あらずや。

2. 歴史的仮名遣いの不徹底

本文が歴史的仮名遣いで書かれているにもかかわらず、途中で現代仮名遣いが混入しています。

唱法華題目鈔 文応元(1260.05・28)
念い→念ひ
立正安国論(広本) 建治・弘安の交(1275-78) 真筆あり
遭って→遭つて
因って→因つて
四条金吾殿御書 文永八(1271.07・12)
遇わん→遇はん
兄弟鈔 文永十二(1275.04.16) 真筆あり
物いわず→物いはず

別名を記載すべき

一部の御遺文では別名や異字が記載されていないため、検索してもヒットしない場合があります。たと えば「木絵二像開眼之事」でヒットする御遺文が「法華骨木肝心」でヒットしません。また「唱法華題目 鈔」と「唱法華題目抄」のように、一字違いでヒットしない御遺文があります。別名は前述の御遺文リス トに記載されています。

作業フロー

修正作業は重要なものから些末なもの(要→略→広)の順に処理していきます。
  1. 文字化けのチェック。
    【異常あり】御遺文集(無ければウェブサイト1)に照らして修正。
    【異常なし】次に移る。
  2. 御遺文混在のチェック。
    【異常あり】混在した御遺文をカットし、新たな項目を立ててペースト2。その御遺文も修正する。
    【異常なし】次に移る。
  3. 誤植のチェック。
    【異常あり】御遺文集(無ければウェブサイト)に照らして修正。
    【異常なし】次に移る。
  4. 誤字脱字のチェック。
    【異常あり】御遺文集(無ければウェブサイト)に照らして修正。
    【異常なし】次に移る。
  5. 表記の統一。

修正細則(提案)

表記統一の際に修正すべき点は以下のとおりです。

  1. ̅:「、」に置換
    バーがあることによって読みにくくなっています。
  2. _:「、」に置換
    同上。
  3. 「 」(全角スペース):ツメル
    ※置換先の単語を入力せずに置換すれば全ての全角スペースをツメルことが可能。
  4. [文]:トル
  5. 日 蓮:「日蓮」に置換
    ※文字分のスペースを空ける合理的理由がありません。むしろ読み違いの原因になるため。
  6. 日蓮花押:「日蓮 花押」
  7. ~:「《中略》」に置換
  8. 「 」月(月が抜けている):削除
    ※たとえば「文永九年 月 日」の場合、御遺文集を調べて執筆日がわからなければ、「文永九年」 とすべきです。 「 」日(日が抜けている):削除 ※たとえば「弘安元戊寅年十月 戊寅年十月」とすべきです。